新卒と中途を同じ基準で見ていないか、という話
2026.01.13

目次
「中途がなかなか定着しない」「新卒が思ったほど育たない」。 こうした相談を受けるとき、制度や市場環境の話に入る前に、まず確認したくなることがあります。
それは、新卒と中途を、同じ感覚で見ていないかどうか、という点です。
採用の現場では、
受け答えがしっかりしている
感じがいい
前向きで素直そう
といった評価が、無意識のうちに共通言語になりがちです。 もちろん、どちらの採用でも大事な要素ではあります。 ただ、それが評価の中心になってしまうと、新卒と中途の違いが見えなくなります。
結果として、
中途なのに活躍するようになるまでが遅く、現場が疲弊する
新卒なのに即戦力を期待され、育成が中途半端になる
といったズレが起きやすくなります。
新卒と中途は、そもそも見ているものが違う
ここで今の話を一度、整理してみます。 新卒と中途は、同じ「採用」でも判断の前提がかなり異なります。
観点 | 新卒採用 | 中途採用 |
|---|---|---|
採用の位置づけ | 将来に向けた投資 | いま不足している機能の補填 |
主に見ていること | 人となり、考え方、学び方 | 職務遂行力、経験の再現性 |
判断の時間軸 | 数年単位 | 入社後すぐ〜半年程度 |
教育の前提 | ある程度は織り込み済み | 原則として最小限 |
ミスマッチ時の影響 | 育成が長引く | 現場負荷が一気に上がる |
判断を誤りやすい点 | 即戦力を期待しすぎる | 人柄や熱意に期待しすぎる |
こうして並べてみると、同じ感覚で評価するほうが無理がある、というのが見えてきます。
新卒採用で起きやすいズレ
「今できるかどうか」で見てしまう
新卒採用で企業が本来見ているのは、今できることよりも、これからどう育っていくか、という部分です。
もう少し噛み砕くと、
どう学ぶタイプか
失敗したときにどう立て直すか
周囲とどう関係をつくるか
といった、時間をかけて効いてくる要素です。
ただ現場では、「学生にしてはしっかりしている」「受け答えが大人っぽい」といった理由で評価が上がり、一方で、少し不器用でも伸びしろのある人を見逃してしまうケースが少なくありません。
新卒採用は、教育やフォローを前提にした判断です。 即戦力かどうか、という視点を強く持ち込みすぎると、期待と現実のズレが生まれやすくなります。
学生が採用サイトで行っている判断は、大きく3つに分けられる
新卒採用サイトで起きている判断を整理すると、大きく次の3つに分けて考えることができます。
ここで働けそうか(適応の判断)
この会社を選ぶ理由が持てるか(納得の判断)
入社後に後悔しないか(リスクの判断)
どの判断を重く見るかによって、新卒採用サイトで「効いてくるコンテンツ」は変わってきます。
中途採用で起きやすいズレ
「いい人そう」で判断してしまう
中途採用の背景には、たいてい具体的な事情があります。
事業が回らない
特定のスキルが足りない
現場の負荷が限界に近い
つまり中途採用は、「このポジションを、いつから、どのレベルで任せたいか」がはっきりしていて初めて成立します。
にもかかわらず、
一生懸命やってくれそう
周りとうまくやれそう
といった印象で判断してしまうと、「悪い人ではないけれど、任せられない」という状態が起きやすくなります。
中途採用で見ておきたいのは、
直近の業務を一人でどこまで担っていたか
判断を任された場面と、そのときの考え方
想定外が起きたときの対応経験
といった、かなり現実的なポイントです。
同じ面接官が見ること自体が問題なのではない
新卒と中途を、同じ面接官が見ること自体は珍しい話ではありません。 問題になるのは、そのときに頭の切り替えができているかどうかです。
よくあるケースとしては、
新卒面接の延長で中途を見てしまう
中途基準の厳しさを新卒にも当ててしまう
という状態です。
これは面接官個人の問題というより、「今回はどちらの採用なのか」という前提が、組織として共有されていないことが原因で起きるケースが多くあります。
実務でまず分けて考えたいこと
ここまでの話を、実務に落とすと、まず意識したいのは次の3点です。
何を見ているのか
新卒なのか、中途なのかで、
どこを見て判断しているのか
何ができていればOKなのか
を、面接官同士で揃えておく必要があります。
何を確かめる場なのか
今回の面接は、
伸び方を見たいのか
いま任せられるかを見たいのか
どちらなのか。 これを言葉にして共有するだけでも、質問や評価のブレはかなり減ります。
採用がうまく噛み合わないと感じたときに
採用がうまくいかないとき、 つい「見る目」や「人柄」の話に寄りがちです。 ただ色々お話を聞いていて感じるのは、 噛み合っていない原因の多くが、評価以前の前提整理にある、ということです。
新卒なのか、中途なのか。 今必要なのは育成なのか、即戦力なのか。 そこを一度整理するだけでも、採用の見え方はかなり変わります。
新卒と中途を分けて考えることは、 手間を増やすための話ではありません。 無駄な不採用や、痛い離職を減らすために、 まず立ち止まって確認しておきたい視点の一つです。


