なぜ「いいもの」は埋もれ、「尖ったもの」が残るのか
2026.01.23

目次
いいことを言っているはずなのに、手応えがない
企業サイトやサービスサイト、採用サイトのリニューアルの相談を受けていると、「内容は間違っていないはずなのに、次につながらない」という状況にぶつかることがあります。伝えるべき情報は揃っているし、表現も無理がない。それでも、問い合わせや具体的な相談、指名といった動きが思ったほど増えていかない。
否定的な反応があるわけではありません。ただ、「これにしよう」と決めてもらえる場面が増えない。そのため、どこを直せばいいのか分からないまま、表現や構成を少しずついじり続けてしまう、という話もよく聞きます。
情報は揃っているのに、比べる材料にならない
いまは、一つのサイトだけをじっくり読んで判断するケースは多くありません。実際には、複数の企業やサービスを行き来しながら、気になったところを拾い読みし、その中から候補を絞っていく流れが一般的です。
読み手の頭の中で起きていること
そのとき、読み手は頭の中では次のようなことを考えています。
何をしている会社なのかは分かる
でも、自分の状況とどう関係するのかは曖昧
他と何が違うのか、言葉にできない
説明が丁寧かどうかよりも、「比べるときに使えそうか」「あとで思い出せそうか」が先に判断されます。この段階で手がかりが見つからないと、内容を深く理解する前に候補から外れてしまいます。
「正しい情報」が、かえって埋もれてしまう理由
多くのサイトでは、事業内容や強み、実績といった情報は過不足なく整理されています。読みながら「しっかりしている」「ちゃんとしている」という印象を持つことも少なくありません。
ただ、読み終わったあとに、
どこが一番の特徴だったか
なぜここを選ぶのか
を改めて考えようとすると、言葉に詰まってしまう。そういう終わり方をしているケースも多く見られます。
これは情報が足りないというより、「どの情報を手がかりに考えればいいのか」が見えにくいことが原因です。その結果、複数の選択肢を並べたときに、どれも似た印象にまとまってしまいます。
領域が違っても、起きていることは似ている
この状態は、特定の分野に限った話ではありません。
領域 | よくある状態 | 読み手の反応 |
|---|---|---|
企業広報 | 理念やパーパスが整っている | 立派だが、自分との距離が分からない |
製品・サービス広報 | 機能や強みが網羅されている | 結局、どこが決め手か分からない |
採用広報 | 働きやすさが一通り伝わる | 良さそうだが、選ぶ理由が弱い |
どれも間違ったことは言っていません。ただ、「自分の場合、ここを見るべきだ」と考えるきっかけが見つかりにくい。そのため、比較の途中で手が止まってしまうわけです。
「尖る」とは、ターゲットに届くための誠実さ
手応えがない状況が続くと、「もっと目立たせたほうがいいのでは」「打ち出しを強くすべきでは」と考えがちです。ただ、ここで言う“尖り”は、派手な表現や刺激的なコピーのことではありません。
鋭角なコミュニケーションを形作る考え方
実際に違いが伝わっている広報を見ていると、共通しているのは「誰に向けた話なのか」「どんな前提の人の話なのか」が、情報の中から自然に読み取れることです。対象を絞り込み、その人にとっての解像度を徹底的に上げていく。その結果として、他と区別できる状態が生まれています。
ちなみに、SAVVYが提案や制作の中で大切にしている考え方をあえて言葉にすると、次のように整理できるのではないかと考えています。

事業内容や実績といった事実をベースにしながら、その会社がなぜそこに時間をかけているのか、なぜその判断を続けてきたのかという「執着=自社特有の強いこだわり」を重ねる。そして、誰にでも当てはまりそうな綺麗な言葉を削っていく。
この視点で見ると、多くの広報では、安心してもらうために言葉を足す一方で、本来いちばん区別につながるはずの「こだわり」が薄まってしまっていることが少なくありません。
誰にでも好かれようとすると、結果として、誰の心にも引っかからない表現になってしまうのではないでしょうか。
「らしさ」が削られてしまう分かれ道
ここまで見てきたような状態は、ある一瞬のミスで起きるというより、制作や検討の途中での小さな判断の積み重ねから生まれるように思います。
現場でよく起きているのは、次のような分かれ道です。
対象を絞ると、取りこぼしが出そうで不安になる
社内で確認を重ねるうちに、角のない言い方のほうが通りやすくなる
強みやこだわりよりも、無難に説明できる情報を優先してしまう
どれも不自然な判断ではありません。ただ、そのたびに「この会社ならでは」と言える部分が少しずつ後ろに追いやられていきます。
結果として残るのは、説明としては整っているものの、比べるときの手がかりになりにくい情報です。「無難な表現に寄ってしまう」というよりも、「無難なほうを選び続けた結果、らしさが削れていく」。
そのほうが実感に近いかもしれません。
比べたときに、何を手がかりにしてほしいのか
広報の役割は、すべてを理解してもらうことではありません。読む人が、
ここは自分に関係ありそうか
他と比べるなら、どこを見るべきか
を考えられる材料を残すことです。
もし、ロゴや社名を入れ替えても違和感なく成立してしまうとしたら、読む人にとっての手がかりがまだ曖昧なのかもしれません。
まとめ:思い出されないのは、考える糸口が残っていないから
内容が正しく、情報も揃っている。それでも選ばれないとき、多くの場合、「考える糸口が見つからないまま読み終わっている」状態が起きています。
どう見せるかを工夫する前に、読む人がどこで迷い、何を手がかりに比べようとしているのかを一度整理してみる。
もし、ロゴや社名を入れ替えても違和感なく成立してしまうとしたら、読む人にとっての手がかりがまだ曖昧なのかもしれません。
そこから見えてくるのは、表現以前の「情報の置き方」なのではないかと考えています。
SAVVYでは、目立たせ方を考える前に、読む人の頭の中で起きていることを一緒に整理するところから支援しています。いまの広報やサイトの出し方に「何か引っかかるな」と感じている場合は、まずはその違和感を言葉にするところから、気軽にご相談ください。


